Discover 手帳 2017

監修者からのメッセージ

しきたり─
日本の豊かな自然と四季を楽しみ、
人間関係を円滑にするための先人達の知恵を暮らしに生かす

 『しきたり十二ヵ月手帳』は、日本で培われ、大切に受け継がれてきた「しきたり」を通して、日本の四季や暮らしを楽しむための手帳です。各月のページには、その月におこなわれる行事や季節のあいさつ、その季節に旬を迎える食べものなど、日本人が大切にしてきた季節のしきたりとともに暮らせる情報を紹介しています。また、季節の目安となる二十四節気と雑節、旧暦の日づけや月の満ち欠けも掲載しました。古くから伝わる行事は、もともと旧暦でおこなわれていましたが、旧暦から新暦に変わったため、季節感がずれてしまった年中行事もあります。旧暦や月の満ち欠けと照らし合わせることで、行事本来の姿や意味が見えてくるかもしれません。さらに、吉凶の判断基準となる六曜や干支も載せています。最近は気にしない人も多くなってきましたが、これも古くから伝わるしきたりのひとつです。巻頭と巻末には、旧暦や二十四節気の解説、人生の通過儀礼、参拝や訪問の作法などを紹介しています。人付きあいを円滑にするために、ぜひご活用ください。

そもそも「しきたり」とは、「仕来たり」や「為来たり」と書きます。「してきたこと」という意味で、社会のなかで以前からそのようにしてきた慣習やならわし、決まりごとを、しきたりと呼んでいます。

日本は、豊かな自然のなかで、稲作を中心とした農業を営んでいました。農業では、暦がとても大事にされます。いつから暖かくなるのか、いつから寒くなるのか。こうした気候の変化を知らなければ、いつ種を播き、いつ草を刈り、いつ収穫すればいいかわからないからです。天気予報などない時代、農作業をおこなう時期の目安になっていたのが、二十四節気でした。しかし二十四節気はもともと中国でつくられたもので、日本の気候とはあわないところもあります。そこで、日本では独自に雑節がつくられました。二十四節気や雑節は、農作業の目安としてだけでなく、祭りや年中行事をおこなう目安としても使われました。たとえば、春には豊作を願う祭りが、秋には収穫に感謝する祭りがおこなわれます。また、春の節分には豆をまき、夏の土用には丑の日にうなぎを食べ、春と秋にやってくる彼岸には先祖を供養する、といった具合です。こうして、さまざまな行事や祭りが長い歴史のなかで生まれ、やがてしきたりとなり、現在の私たちにまで受け継がれてきました。

また、人間はひとりではなく、社会のなかで家族や親戚、友人たちとともに暮らしています。社会のなかで暮らす以上、自分ひとりだけが好き勝手なことをするわけにはいきません。そこで、ほかの人と摩擦を起こさず、人間関係を円滑にするためのさまざまな知恵を、先人たちは培ってきました。たとえば、贈りものをするときはどうしたらいいのか、来客があったときの席次はどう決めればいいのか、先祖をどう敬えばいいのか、といったことです。こうしたことは、社会のなかで自然に生まれた慣習、つまりしきたりによって、滞りなくおこなわれてきたのです。

ふだんは日々の生活に追われ、しきたりとは無関係なようでも、お正月には初詣に行き、お盆には墓参りをするなど、私たちはいまでも、生活に息づくしきたりとともに暮らしています。日々、この手帳を見ることで、今日がどんな日なのか、何をすべき日なのかを再発見し、先人たちから大切に受け継いできたしきたりによって、豊かで彩りのある暮らしとなることを願っています。

飯倉晴武

プロフィール

1933年、東京生まれ。歴史学者。東北大学大学院修士課程日本史専攻を修了し、宮内庁へ入庁。書陵部図書課首席研究官、書陵部陵墓課陵墓調査官等を歴任。93年に退官。その後、奥羽大学文学部教授、日本大学文理学部講師等。
主な著書・監修に、『日本人のしきたり』『日本人 礼儀作法のしきたり』(青春出版社)、『神頼み入門』(角川グループパブリッシング)、『明治天皇以前天皇文書の読み方・調べ方』(雄山閣出版)など。