エンタメ小説新人賞「本のサナギ賞」の裏側!

エンタメ小説新人賞「本のサナギ賞」の裏側!

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ディスカヴァーといえば、ビジネス書や自己啓発書、女性エッセイなどを中心に刊行している出版社というイメージが強いかもしれません。その出版社が、エンタメ小説の新人賞をはじめました。「本当に面白い本をベストセラーにしたい」という想いからこのプロジェクトを立ち上げたのは、入社 2 年目の営業スタッフ、林拓馬(現フィクション事業部リーダー)でした。なぜ、いま、小説なのか? 本のサナギ賞にこめられた思いとは? 彼が Discover Book Bar で語った本のサナギ賞の裏側をお送りします。

エンタメ小説新人賞「本のサナギ賞」の裏側!

2015.8.13
「本のサナギ賞」プロジェクトスタッフ・林 インタビュー

「本のサナギ」をベストセラーという蝶に羽ばたかせたい

― どうして「サナギ賞」という名前にしたんですか?

この賞は、全国の書店員さんが「世に出したい新作」を選ぶエンタメ小説の新人賞なんです。本が大好きな人を「本の虫」って言いますよね。「本の虫」である書店員さんに、「本のサナギ」を見つけてもらい、一緒にベストセラーという蝶に育てて羽ばたかせたい、という想いでつけました。

― 書店員さんと一緒に選ぶというのが従来の新人賞との違いですね。他に特徴はありますか?

初版が2万部ということ。文芸書の新人が本を出版するとなると、通常、初版は大体3,000~4,000部なんです。2万部って本当に異例なんですよ。なぜ2万部なのかというと、新人賞が決まって発売して終わりにするのではなく、ベストセラー作品に育てたいという想いが根底にあるからです。

書店さんからよく聞くのが「売りたい本がなかなか入荷されない」ということ。売り上げの高い書店から優先的に配本されて地方にはいい本が届かないとか、そもそも印刷部数が足りないとか。ディスカヴァーの新人賞ではそういう現状を打開したかった。どの書店さんでも買えるという状態を作りたくて、この大胆な部数設定になりました。

― なるほど! この賞をやろうと思ったきっかけはなんだったんですか?

私は入社2年目まで書店営業をしていたんです。一店舗ずつ書店さんを訪問して書店員さんとお話をするんですが、書店員さんは小説好きな方が多いんですよね。小説の話になると、みなさん目を輝かせて自分のおすすめ本の話をしてくださるんです。それに、好きな作品、感動した作品には、渾身のPOPを付け、お客さんの目に留まる工夫を惜しまないんですよね。「面白い本をより多くの人に読んでもらいたい」という熱い想いをいつも感じていました。

しかし、それでも多くの場合、店の一等地を占めるのは有名作家ばかりで、無名の新人作家が大展開されているという状況はほとんどありません。有名作家だけでなく無名の新人であっても、「本当に面白い本ならば、もっと多くの書店で目立っていてもいいのではないか」と思ったのをきっかけに、書店員さんが選ぶ新人賞という構想が生まれました。

直取引のディスカヴァーでは、営業スタッフが全国津々浦々の書店員さんを毎月訪問しています。書店員のみなさんの情熱をカタチにできるとしたらディスカヴァーしかないんじゃないか、という想いもあり、賞の創設にむけて動き出しました。

本邦初公開、募集と審査の裏側

― 第一回「本のサナギ賞」の裏側に迫りたいと思います。応募総数265作品と、第一回目からかなり集まりましたね。なぜだと思いますか?

他の新人賞を調べてみると、第一回目は100~150作品くらい集まることが多いようなので、265作品も集まったのはなかなかすごいですよね。でも実は僕、途中まで応募が少なすぎて中止になるんじゃないかと思っていました(笑)。7月31日が締切だったんですが、6月6日の時点で10作品しか集まっていなかったんですよ!

― それはまずい(笑)!

それでも「いや、でもまだ2か月ある」と楽観的に思っていたのですが、いよいよ1か月をきった段階でまだ20作品しか集まっていなかった。さすがにこれはやばいと焦りまして、広告を出したり、朝5時に起きて文学フリマでチラシを置いて回ったり、全国の小説スクールで告知してもらったりといろいろ施策を打ったわけです。それでも2週間前でまだ56作品…。

ところが、締切1週間前になって、最後の最後にラッシュが来たんです。最後の1週間は毎日30作品くらいずつ届きました。入力していたスタッフが悲鳴をあげるくらいでしたね。ひやひやしましたが、中止にならず本当によかったです。

― そんな苦労があったんですね!でも応募作が多ければ多いほど審査は大変になりますよね。審査の過程を教えてください。

本邦初公開ですね(笑)。

まず一次・二次審査は社内で行いました。一次審査では、小説好きの社員十数名が集まり全作品を読みました。1作品につき必ず3人以上は読むようにしていました。265作品ありますから、みんなで徹夜しながら読みましたね。

そこから34作品に絞り、二次審査には全社員が参加しました。1人6作品くらいずつじっくり読み、絞られたのが9作品。そして三次審査では、審査に参加すると手を挙げてくださった書店員さんに読んでもらい、1~3位まで順位をつけていただきました。書店員さんの審査員は37人。そして弊社社長の干場も審査に加わりました。干場の持ち票ももちろん、書店員のみなさんと同じ1票です。 

― 審査員の好みで結果が左右されてしまうんじゃないですか?

もちろん、それぞれの好みもあると思います。社内審査ではいくつかの評価項目を設け、それに沿って評価し、点数化して客観的に計れるようにしました。また、その後の審査でも書店員さんとしては「自分の店で売りたいか?」出版社としては、「自信を持って書店員さん、読者におすすめできるのか?」という軸で選考をしていますから、本当に厳選された作品が受賞したと思っています。

「本のサナギ賞」には、書店員さんが「本当に売りたい」と思った作品を書籍化し、デビューした新人作家が、「ベストセラー作家」へと成長する「羽化」への希望が込められています。まだ始まったばかりの賞ですが、作家をめざす応募者の方や、全国の書店員さん、そして、本が好きな「本の虫」のみなさんとともに、「羽化」を起こして行きたいと思っています! これからも応援をよろしくお願いします。

本のサナギ賞

http://fictions.d21.co.jp/sanagi/