商品詳細

マスペディア 1000

マスペディア 1000

紙の書籍 Mathpedia 1000
価格: 4,968円(税込)
  • メーカーディスカヴァー
  • 発売日2016.12.22
  • ISBN978-4-7993-2020-4
  • ページ数584P
  • サイズA5変形判・上製 /

商品概要

サイエンスライティングの筆致で書かれた「読む数学事典」! 厳選された1000項目を読み進めていくことで、数学の最先端が見えてきます。

商品説明

“世にも美しい事典”と評判のサイエンスペディア(第50回造本装幀コンクール経済産業大臣賞受賞)に姉妹編の数学版が登場!

数学を10のカテゴリーに大きく分け、最重要キーワードを1000個選び、それぞれを簡潔に紹介したおしゃれな数学事典です。

それぞれのキーワードは五十音順ではなく、数学のサブカテゴリー(幾何学、代数学、解析学……)ごとに並べられています。気になるキーワードを調べるのに使うのはもちろんですが、サブカテゴリーに含まれるキーワードを一気に読むという楽しみ方もおすすめです。そうすることで、気になるサブカテゴリーの全体像が浮かび上がってくるからです。

事典としての機能とポピュラーサイエンスのように読めるとっかかりやすさを融合させた本書は、事典としてはもちろん、想像力を刺激する数学エッセイとしても楽しむことができるのものです。


(本書の一部)
数列 Sequences
 数列とは、無限に続く数のリストである。たとえば、{1, 1, 2, 5, 15, 52, 203, 877, 4140, 21147,……}といったものだ。この例は、整数のみが並んでいるので、整数列だ。実数値や複素数値の数列を考えることもできる。なじみやすいのは、どんなパターンや規則にしたがっているのかが理解でき、次の項が何かを予測できるような数列だ。数学らしくいえば、第n項を求めるための公式があるものだ。
とはいえ、任意の無限数列は、たとえ明らかな規則がなくても、数列と認められる。
数列は数学の全分野で、そして、数学を超えた広い世界でも重要な役割を果たしている。数列といとこのような関係にあるのが級数だ。級数は項を加算していくような数列だ。

アキレスと亀 Achilles and the Tortoise
紀元前450 年ごろ、エレアの哲学者ゼノンはパラドクスを集めた。最も有名なのは、物理学的な運動が不可能であることを証明するものだ。
このパラドクスには、伝説の英雄アキレスが登場する。この偉大なる戦士が亀と競争したとき、思いもよらない問題に出くわす。
アキレスは、亀が少し先の地点からスタートすることに同意した。そして、亀が出発したところまで難なく走っていった。アキレスがその場所に着いたとき、亀は少し先を行っている。またその地点までアキレスは走っていくのだが、到着してみるとまたも亀は先を行っている。アキレスが亀に追いつくには、亀がさっきいた場所にたどり着かねばならない。しかし、亀のいた場所にアキレスが到着すると、亀はいつも少し先を行っているのだ。したがって、アキレスはどうしても亀に追いつくことができない。
ルイス・キャロルの論理的対話篇『亀がアキレスに言ったこと』、そして、20 世紀における名著の1つであるダグラス・ホフスタッターの『ゲーデル、エッシャー、バッハ――あるいは不思議の環』において、アキレスと亀は、パラドクスをめぐるさらなる冒険をする。
ゼノンが、運動や変化がすべて幻想であると本当に信じていたという可能性もある。しかし、数学的観点から見たゼノンのパラドクスの重要性は、離散系と連続系の関係性の難解さを見せつけてくれることだ。

目次

まえがき

数(基本、計算、数体系、有理数、約数と倍数、帰納法、数の表現法、超越数、定規とコンパスによる作図、ディオファントス方程式、素数)

幾何学(ユークリッド幾何学、三角形、円、多角形と多面体、変換、充填形、曲線と曲面、極座標、離散幾何学、微分幾何学、位相幾何学、結び目理論、非ユークリッド幾何学、代数的位相幾何学、代数幾何学、ディオファントス幾何学)

代数学(文字で数を表す、方程式、ベクトルと行列、群論、抽象代数学)

離散数学(組み合わせ論、グラフ理論、ラムゼー理論)

解析学(数列、級数、連続性、微分学、積分学、複素解析、べき級数、累乗、フラクタル、力学系、微分方程式、フーリエ解析)

論理学(基本論理、演繹法、集合論、ヒルベルトプログラム、複雑性理論、計算可能性理論、モデル理論、不確実性とパラドクス)

超数学(数学という営み、数学と技術、数学の哲学)

確率論と統計学(統計学、確率論、確率分布、確率過程、暗号学)

数理物理学(ニュートン力学、波動、場と流れ、特殊相対性、重力、量子力学、場の量子論)

ゲームとレクリエーション(ゲーム理論、フィボナッチ、黄金分割、パズルと難問)

索引

著者からのメッセージ

名前が知られている最古の数学者はアーメスである。この人物は、紀元前1650年ごろのエジプトの書記官であり、自身が「古代の書」と呼んだ複雑な数学問題の数々を書き写し、研究した。アーメスの手による写本は現在、リンド・パピルスとして知られている。そのリンド・パピルスやさらに古い石板の記録から、古代エジプトや古代バビロンの学者たちが記数法を精緻化したこと、代数学や幾何学や数論における難問に取り組んでいたことが判明した。数学の研究は文明と同じくらいの歴史を誇る一方で、こんにちの世界の現代性を表すものでもある。私たちは、リンド・パピルス以来、アーメスが夢にも思わなかったような科学技術の進歩を目の当たりにしてきた。こうした進歩の中核をなすものこそ、数学の発展なのである。

数学は、あらゆる状況で応用可能な基本言語を提供してきた。数学が最も大きな役割を果たしたのは、物理学の分野だろう。17世紀初頭にガリレオが、「宇宙は純粋に数学で記述できるだろう」という革命的な視点を示したことから、量子力学や相対論といった、世界に変化をもたらす理論への道が拓けた。数学に依存しているのは物理学に限ったことではない。社会科学では、確率論や統計学によって理論を実証している。じつのところ、ビジネスや政治の世界でもそうだ。さらには、情報技術の出現に伴い、これまでとはまた別の密接な関係をコンピューター科学との間に持つようになった。

影響を与える範囲が広がるだけではなく、数学自体も驚くほどの速さで発展を続けている。歴史上の偉大な数学者の1人として名を連ねるアンリ・ポアンカレは、エリック・テンプル・ベル曰く「最後の博識家」だった。彼は、当時の数学の全分野をあますところなく体得した最後の人物だったのである。ポアンカレがこの世を去ったのは1912年のことだ。

いまや、位相幾何学全体を体得したといいきれる人などいないはずだ。幾何学や論理学の全体ともなるとなおさらのことだ。これらですら、数学全体からすればほんの一部にすぎない。ポアンカレは、数学の歴史における激動の時代を生きた。古くから受け継がれてきた考え方が一掃され、新たな種が撒かれ、20世紀に花を咲かせた。その結果、私たちの目の前に広がる数学の世界は、かつて最高の先見性を持っていた人たちでさえも思い描けなかったほどに豊かで複雑だ。

本書で私が目指すのは、いまの数学の世界がどのようなもので、いかにしてそうなったかの概要を示すことだ。数学の全景をぼんやりととらえた地図を描いてもよかったのだが、おそらくそれは役に立たないし、おもしろくもないだろう。

だからそれはやめて、数学の世界に点在する興味深い名所から1000枚の「絵葉書」を描くことにした。それでも、じゅうぶん数学の全景が味わえるはずだ。1000というのは非常に小さな数だ。本当に重要なところ、真にすばらしい定理、注目すべき未解決問題、中核をなす考え方を選び出すことは、私にとってかなりの難題だった。

本書では、1つの分野を3段階で紹介している。全体が10章にわかれており、それぞれの章が1つの分野を網羅している。これが第1段階だ。各章は、2段階目として節にわかれている。ここでは範囲を狭め、たとえば「素数」などの1つのトピックに焦点を当てている。節は、第3段階にあたる個々の項目を集めてできている。
 本書の読み進め方は、何を得たいと求めているかに合わせるといいだろう。素数に興味があるならば、素数の節を読み通すことで全体像をつかめる。リーマン予想についての簡潔な説明を求めているのであれば、その項目を読めばいい。ただし、「リーマン予想の簡潔な説明」は不可能なので、少し前の、必要な事柄が書いてあるいくつかの項目も理解する必要があるだろう。

もちろん、拾い読みも可能だ。そうすることで、これまで知らなかった話題に出会えることだろう。本書で想定する読者は、初心者から知識のある学生、熱狂的数学ファンに至るまで、数学に興味のあるすべての人たちである。読者がいま、どんな知識を持っているとしても、学びとなり、心惹きつけられる題材が見つかるはずだ。

本書では、高度で複雑なテーマも扱っている。それこそが数学の本質であるから、尻込みしていては目的にそぐわない。とはいえ、難解な概念を持ち出す前に、関連のある基礎概念を説明し、理解するための足掛かりを提供するような構成にしてある。私の役割は、基礎的な考え方から極めて抽象的な考え方まで、すべての考え方を、可能な限り単刀直入に、焦点を絞った形でお見せすることだ。

私は困難を楽しみ、最善を尽くした。あとは、読者のみなさんが、本書を存分に味わってくれることを願うばかりである。
(「まえがき」より)